髪色は、明るさより『濁り』で印象が変わる。
同じくらいの明るさなのに、印象が違うことがあります。
美容室で髪色を相談するとき、よく基準になるのが「明るくしたい」「暗くしたい」という言葉です。
もちろん、明るさは髪色の印象を決める大切な要素です。
でも、同じくらいの明るさに見える二つの髪色を並べると、片方はやわらかく、もう片方は少し重く見えることがあります。
ベージュなのに、透明感がある。
ブラウンなのに、軽く見える。
反対に、明るくしているのに、どこか硬く見える。
この違いを考えるとき、美容師が見ているもののひとつが、色の「濁り」です。
髪色は、明るさだけで見えているわけではありません。
髪色の見え方には、明るさだけではなく、色味の強さや重なり方が関係しています。
赤みがどのくらい残っているか。
黄みをどこまで抑えているか。
グレーやブルーをどのくらい重ねているか。
元の髪にある色と、今回入れる色がどう混ざるか。
そうした要素が重なることで、色が澄んで見えたり、少しくすんで見えたりします。
ここでいう「濁り」は、悪い意味ではありません。
濁りを少なくすれば、光を通すような軽い印象に見えやすい。
少し濁りを加えると、落ち着きや深さが生まれやすい。
大切なのは、濁っているか、濁っていないかではなく、その人に必要な濁り方になっているかなんですよね。
以前、「髪型を変えなくても、分け目で印象は変わる。」と書きました。
分け目が「位置」で印象を動かすなら、髪色は「色の重なり」で印象を動かします。
透明感がある色と、落ち着いて見える色。
「透明感のある髪色にしたい」という相談は、とても多いです。
透明感という言葉から、明るい髪色を想像する方もいるかもしれません。
でも、暗めの髪色でも、色の濁りを調整すれば軽く見せることはできます。
反対に、明るい髪色でも、いくつもの色味が重なりすぎると、少し重く見えることがあります。
透明感が似合う人。
少しくすんだ落ち着いた色が似合う人。
同じ人でも、服装や季節、肌の見え方によって、ちょうどいいバランスは変わります。
やわらかく見せたいのか。
落ち着いて見せたいのか。
顔色を明るく見せたいのか。
髪色の明るさを決める前に、まずどんな印象に見せたいかを考えると、選ぶ色も変わってきます。
ベージュ、グレージュ、ブラウン。名前だけでは決まりません。
ヘアカラーには、たくさんの名前があります。
ミルクティーベージュ。
オリーブグレージュ。
ショコラブラウン。
写真を見て「この色にしたい」と思うきっかけとして、色の名前は分かりやすいものです。
ただ、同じ名前のカラーでも、仕上がりが同じになるとは限りません。
元の髪の明るさ。
これまでのカラー履歴。
髪に残っている赤みや黄み。
髪の太さや、光の当たり方。
それらによって、同じ薬剤を使っても見え方は変わります。
だから僕は、色の名前をそのまま再現するというより、写真のどこを気に入っているのかを見るようにしています。
明るさなのか。
赤みの少なさなのか。
光に当たったときの透け方なのか。
名前より、見え方を共有する。
その方が、仕上がりのイメージは合わせやすくなります。
ブリーチをすれば、透明感が出るとは限りません。
透明感のある色をつくるために、ブリーチが必要な場合はあります。
髪に残っている色を明るくすることで、表現できる色の幅が広がるからです。
ただ、ブリーチをしたからといって、自動的にきれいな透明感が出るわけではありません。
以前、「複雑履歴ブリーチは、『明るくする技術』ではない。」という話を書きました。
過去のカラーや縮毛矯正の履歴がある髪は、場所によって明るくなり方が違うことがあります。
その状態を見ずに明るさだけを追うと、色の濁りやムラにつながることもあります。
必要なのは、ただ明るくすることではなく、今の髪の状態で、どこまで澄んだ色をつくれるかを判断することです。
透明感と、髪への負担。
希望する色と、続けやすさ。
その両方を考えながら、色の重なりを整えていきます。
美容室では、色の名前より「どう見えたいか」を伝えてください。
カラーを相談するとき、専門的な言葉を用意する必要はありません。
やわらかく見せたい。
落ち着いて見せたい。
肌がくすんで見えないようにしたい。
仕事で浮かない範囲で、少し軽く見せたい。
その言葉があれば、明るさだけではなく、色味や濁り方まで含めて考えることができます。
以前、「似合わなくなったのではなく、似合わせる場所が変わっただけ。」と書きました。
髪色も同じです。
昔似合っていた色をやめるのではなく、今の自分に合わせて明るさや濁りを少し調整する。
大きく変えなくても、それだけで顔まわりの見え方が自然になることがあります。
髪色は、明るいか暗いかだけではありません。
どのくらい澄ませるか。
どのくらい落ち着かせるか。
その小さな調整が、その人らしい印象につながるのだと思います。
次回予告
次回は、
「髪のツヤは、光らせることより、乱れを減らすこと。」
について書こうと思います。
オイルをつけても、なぜかツヤが出ない。
反対に、何もつけていないのに、きれいに見える髪がある。
次回は、美容師として考えている「ツヤと髪の面の整い方」について書いてみようと思います。
