髪型を変えなくても、分け目で印象は変わる。
「髪型を変えたい」ほどではないけど、なんとなく飽きることがあります。
いつもと同じ髪型。
嫌いになったわけでもないし、似合わなくなったとも言い切れない。
でも鏡を見ると、なんとなく最近しっくりこない。
美容師をしていると、こういう相談は意外と多いです。
そんなとき、すぐに長さを変えたり、レイヤーを入れたりするのではなく、僕が見ることのひとつに「分け目」があります。
いつも右で分けているなら、少し中央へ。
センターなら、ほんの少し左右へ。
それだけでも、思っている以上に見え方が変わることがあるんですよね。
分け目は、ただ髪を左右に分けている線ではありません。
分け目を変えると、変わるのは髪の流れる方向だけではありません。
額がどこまで見えるか。
トップがどこで立ち上がるか。
顔まわりの髪が、どこに落ちるか。
左右どちらの顔が、より見えるか。
同じ長さ、同じ髪色でも、こうした位置関係が少し変わることで、顔全体の印象も変わります。
以前、「前髪は、長さより『幅』で印象が変わる。」という話を書きました。
分け目も、それに少し似ています。
何センチ切るかだけではなく、髪をどこから動かすか。
似合わせを考えるとき、こういう小さな位置は意外と大切なんです。
センターが似合う、横分けが似合う。それだけでもありません。
「センターパートが似合う顔ですか?」
そう聞かれることもあります。
もちろん、顔型や額の広さ、髪質との相性はあります。
でも、センターか横かという二択だけで考えなくてもいいと思っています。
真ん中から数ミリ、1センチほどずらすだけで、見え方が変わる人もいます。
左右で眉の高さが少し違ったり、目の見え方が違ったり、髪の生え方に癖があったり。
人の顔も髪も、完全な左右対称ではありません。
だからこそ、分け目も「正解の場所」に合わせるというより、その人が自然に見える場所を探すくらいでいいんですよね。
ただ、無理に分け目を変えなくてもいい。
ここは美容師として結構大事にしています。
髪には、生え癖があります。
前髪が立ち上がりやすい方向。
自然に流れやすい方向。
どうしても割れやすい場所。
それを無視して「この分け目の方が似合うから」と無理に固定すると、毎朝のセットが大変になってしまいます。
美容室で仕上げた日はきれいでも、自分で再現できなければ、結局その髪型とは付き合いにくい。
以前、「髪型は、セットした瞬間より、何もしない日に差が出る。」と書いたのも、まさにそのためです。
似合うことと、続けられること。
その両方を考える必要があります。
カットする前に、一度試してみてもいいと思います。
「最近、今の髪型に飽きてきたな」
そう思ったら、まず自宅で分け目を少し変えてみてください。
きっちり分ける必要はありません。
いつもの位置から、指一本分くらいずらしてみる。
そして正面だけではなく、少し離れて見てみる。
可能なら、スマートフォンで写真を撮って比べてみる。
額の見え方。
トップの高さ。
顔まわりの落ち方。
それだけでも、「こっちの方がなんとなくいい」という場所が見つかることがあります。
その感覚は、美容室で髪型を相談するときにも、とても参考になります。
大きく変えなくても、印象を動かす方法はあります。
前回、「変えることと、整えることは違う。」という話を書きました。
今回の分け目も、それに近いと思っています。
髪型に違和感を感じたからといって、必ずしも大きく切ったり、色を変えたりする必要はありません。
前髪の幅を少し変える。
顔まわりの位置を少し変える。
分け目を少しずらす。
ほんの小さな調整でも、その人の印象が自然に変わることがあります。
美容師として僕が考える「似合わせ」は、何か大きな変化をつくることだけではありません。
今あるものを見ながら、どこを少し動かせば、その人が自然に見えるのか。
髪型を変えたくなったときほど、まずそんな小さなところから見てみてもいいんじゃないかなと思っています。
次回予告
次回は、
「髪色は、明るさより『濁り』で印象が変わる。」
について書こうと思います。
同じくらいの明るさなのに、柔らかく見える色と、少し重く見える色がある。
ベージュ、グレージュ、ブラウン。
色の名前だけでは分からない、髪色の見え方があります。
次回は、美容師としてカラーをつくるときに見ている「明るさだけではない色の印象」について書いてみようと思います。
