似合わなくなったのではなく、似合わせる場所が変わっただけ。
「昔は似合っていたんですけど。」
「昔はこの髪型が似合っていたんですけど、最近なんか違う気がして。」
40代前後のお客様から、そんな話を聞くことがあります。
髪型自体は特に変えていない。
昔の写真を見返してみても、そこまで極端に違うわけでもない。
それなのに、鏡を見たときの感覚だけが、なんとなくしっくりこない。
その違和感、気のせいではないかもしれません。
でも僕は、「年齢を重ねたから似合わなくなった」という単純な話ではないと思っています。
似合うものがなくなったのではなく、似合わせる場所が変わった。
その方が、実際にお客様の髪を見ていて感じることに近いんですよね。
変わっていくのは、髪型より先に自分の方。
20代の頃と今とでは、自分では気づかないくらい少しずつ変わっている部分があります。
顔つき。
肌の見え方。
髪質や毛量。
髪の生え方。
体型や姿勢。
普段着る服や、ライフスタイルも変わっているかもしれません。
そう考えると、まったく同じ髪型を再現しても、以前と同じように見えないことがあるのは、そんなに不思議なことではないんですよね。
だからといって、昔好きだった髪型をやめる必要もありません。
変えるべきなのは、髪型そのものではなく、今の自分に合わせるためのバランスなのかもしれません。
数センチ、数ミリで「似合う」は変わる。
僕が実際に見ているのは、
前髪の幅や厚み。
顔まわりを始める位置。
レイヤーの位置。
トップのボリューム。
襟足や首まわりの見え方。
そして、髪色の明るさやコントラスト。
全部を大きく変える必要はありません。
顔まわりを数センチ変える。
前髪の幅を少し調整する。
レイヤーを入れ始める位置を変える。
それだけで、今のその人に急になじむことがあります。
以前、**「レイヤーカットは、長さより『位置』で決まる。」**というJOURNALでも書きましたが、似合わせもそれに近いところがあります。
大切なのは「何センチ切るか」だけではなく、どこをどう変えるか。
その小さな違いが、全体の印象を変えてくれるんですよね。
同じ方を何年も担当していると、わかること。
美容師という仕事を長くしていると、同じお客様を何年も担当することがあります。
20代だった方が30代になり、30代だった方が40代になる。
その変化を見続けていると、「似合うものがなくなった」と感じることは、あまりありません。
むしろ、
「似合い方が変わったんだな。」
と感じることの方が多いんです。
以前と同じスタイルでも、顔まわりを少し変えてみる。
シルエットを少し調整する。
髪色の見え方を少し変えてみる。
すると、急に今のその人にしっくりくる瞬間があります。
年齢に合わせて髪型を変えているというより、今のその人に合わせ直している。
僕の中では、そんな感覚に近いです。
その髪型を諦める前に。
もし、
「昔好きだった髪型が、最近なんとなく違う気がする。」
そう感じているなら、すぐにその髪型を諦めなくてもいいと思います。
次に美容室へ行ったとき、
「この髪型にしてください。」
だけではなく、
「昔はこの髪型が好きだったんですが、最近少し違和感があって。」
と、そのまま伝えてみてください。
実は、その「なんとなく違う」という感覚こそ、似合わせを考えるうえで大切な材料になります。
grit.HAIR|+の韓国レイヤーでも、写真をそのまま再現するのではなく、骨格や髪質、普段のスタイリングまで見ながら、顔まわりやレイヤーの位置を調整しています。
「この髪型が似合うか」ではなく、
「自分なら、どう似合わせるか。」
そんな相談の仕方があってもいいと思うんですよね。
年齢に合わせるのではなく、今の自分に合わせる。
40代になったから、この髪型。
若いから、この髪型。
そんなふうに、年齢だけで似合うものを決める必要はないと思っています。
変わったのは、好きなものではなく、自分自身のバランスかもしれません。
だったら、その変化に合わせて少しだけ髪を調整すればいい。
似合わなくなったのではなく、似合わせる場所が変わっただけ。
そう考えると、年齢を重ねてからの髪型との付き合い方も、少し楽になるんじゃないかなと思っています。
次回予告
grit.JOURNAL Vol.012
「第一印象は、横顔で決まる。」
鏡を見るとき、僕たちはほとんど正面から自分を見ています。
でも、人から見られているのは正面だけではありません。
前髪の流れ。
顔まわりのデザイン。
レイヤーの位置。
自分では気づきにくい、ふとした横顔の印象について、次回は書いてみようと思います。
