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grit.JOURNAL Vol.011

似合わなくなったのではなく、似合わせる場所が変わっただけ。

「昔は似合っていたんですけど。」

「昔はこの髪型が似合っていたんですけど、最近なんか違う気がして。」

40代前後のお客様から、そんな話を聞くことがあります。

髪型自体は特に変えていない。

昔の写真を見返してみても、そこまで極端に違うわけでもない。

それなのに、鏡を見たときの感覚だけが、なんとなくしっくりこない。

その違和感、気のせいではないかもしれません。

でも僕は、「年齢を重ねたから似合わなくなった」という単純な話ではないと思っています。

似合うものがなくなったのではなく、似合わせる場所が変わった。

その方が、実際にお客様の髪を見ていて感じることに近いんですよね。

変わっていくのは、髪型より先に自分の方。

20代の頃と今とでは、自分では気づかないくらい少しずつ変わっている部分があります。

顔つき。

肌の見え方。

髪質や毛量。

髪の生え方。

体型や姿勢。

普段着る服や、ライフスタイルも変わっているかもしれません。

そう考えると、まったく同じ髪型を再現しても、以前と同じように見えないことがあるのは、そんなに不思議なことではないんですよね。

だからといって、昔好きだった髪型をやめる必要もありません。

変えるべきなのは、髪型そのものではなく、今の自分に合わせるためのバランスなのかもしれません。

数センチ、数ミリで「似合う」は変わる。

僕が実際に見ているのは、

前髪の幅や厚み。

顔まわりを始める位置。

レイヤーの位置。

トップのボリューム。

襟足や首まわりの見え方。

そして、髪色の明るさやコントラスト。

全部を大きく変える必要はありません。

顔まわりを数センチ変える。

前髪の幅を少し調整する。

レイヤーを入れ始める位置を変える。

それだけで、今のその人に急になじむことがあります。

以前、**「レイヤーカットは、長さより『位置』で決まる。」**というJOURNALでも書きましたが、似合わせもそれに近いところがあります。

大切なのは「何センチ切るか」だけではなく、どこをどう変えるか。

その小さな違いが、全体の印象を変えてくれるんですよね。

同じ方を何年も担当していると、わかること。

美容師という仕事を長くしていると、同じお客様を何年も担当することがあります。

20代だった方が30代になり、30代だった方が40代になる。

その変化を見続けていると、「似合うものがなくなった」と感じることは、あまりありません。

むしろ、

「似合い方が変わったんだな。」

と感じることの方が多いんです。

以前と同じスタイルでも、顔まわりを少し変えてみる。

シルエットを少し調整する。

髪色の見え方を少し変えてみる。

すると、急に今のその人にしっくりくる瞬間があります。

年齢に合わせて髪型を変えているというより、今のその人に合わせ直している。

僕の中では、そんな感覚に近いです。

その髪型を諦める前に。

もし、

「昔好きだった髪型が、最近なんとなく違う気がする。」

そう感じているなら、すぐにその髪型を諦めなくてもいいと思います。

次に美容室へ行ったとき、

「この髪型にしてください。」

だけではなく、

「昔はこの髪型が好きだったんですが、最近少し違和感があって。」

と、そのまま伝えてみてください。

実は、その「なんとなく違う」という感覚こそ、似合わせを考えるうえで大切な材料になります。

grit.HAIR|+の韓国レイヤーでも、写真をそのまま再現するのではなく、骨格や髪質、普段のスタイリングまで見ながら、顔まわりやレイヤーの位置を調整しています。

「この髪型が似合うか」ではなく、

「自分なら、どう似合わせるか。」

そんな相談の仕方があってもいいと思うんですよね。

年齢に合わせるのではなく、今の自分に合わせる。

40代になったから、この髪型。

若いから、この髪型。

そんなふうに、年齢だけで似合うものを決める必要はないと思っています。

変わったのは、好きなものではなく、自分自身のバランスかもしれません。

だったら、その変化に合わせて少しだけ髪を調整すればいい。

似合わなくなったのではなく、似合わせる場所が変わっただけ。

そう考えると、年齢を重ねてからの髪型との付き合い方も、少し楽になるんじゃないかなと思っています。

次回予告

grit.JOURNAL Vol.012

「第一印象は、横顔で決まる。」

鏡を見るとき、僕たちはほとんど正面から自分を見ています。

でも、人から見られているのは正面だけではありません。

前髪の流れ。

顔まわりのデザイン。

レイヤーの位置。

自分では気づきにくい、ふとした横顔の印象について、次回は書いてみようと思います。