疲れている日は、見た目の判断を急がない。
「なんか今日、老けて見えるな」と思う日があります。
朝、鏡を見たとき。
いつもと同じ髪型なのに、なんとなく似合っていない気がする。
顔が疲れて見えたり、急に老けたように感じたり、「そろそろ髪型を変えた方がいいのかな」と思うこともあるかもしれません。
でも、そういう日に感じる違和感が、すべて髪型のせいとは限らないんですよね。
美容師をしていると、お客様から、
「最近、この髪型が似合わなくなった気がする」
と相談されることがあります。
もちろん、髪型を見直した方がいい場合もあります。
ただ、その日の状態まで含めて見てみると、少し違う理由が見えてくることもあります。
疲れている日は、髪まで違って見えるんですよね。
疲れているときは、表情がいつもより沈んでいたり、目元が重く見えたり、姿勢が少し下がっていたりします。
髪型そのものは昨日とほとんど変わっていなくても、その周りにある表情や姿勢が変わることで、全体の見え方は変わります。
以前、「姿勢は、背筋を伸ばすだけでは変わらない。」という話を書きましたが、髪も姿勢も、それだけを切り離して印象を考えることはできません。
顔、髪、眉、姿勢、服。
いろいろなものが一緒になって、その日の自分に見えているんですよね。
だから、疲れている日に鏡を見て「髪型が似合わない」と感じても、本当に髪型だけが原因なのかは、一度分けて考えてもいいと思っています。
「変えたい」と「整えたい」は、少し違います。
疲れているときほど、急に何かを変えたくなることがあります。
髪をバッサリ切りたい。
色を大きく変えたい。
今までとはまったく違う髪型にしたい。
もちろん、それ自体が悪いわけではありません。
でも僕は、そういうときに「本当に変えたいのか、それとも今の自分を少し整えたいのか」を考えることがあります。
この二つは、似ているようで少し違うんですよね。
大きく変えなくても、戻ってくることがあります。
伸びた襟足を整える。
重くなった顔まわりを少し調整する。
前髪の幅や長さを見直す。
眉から大きくはみ出した毛を整える。
それくらいでも、鏡を見たときの印象が変わることがあります。
「あれ、なんか垢抜けたね」と言われる変化は、必ずしも大きなイメチェンから生まれるわけではありません。
何かを足したり、大きく変えたりするのではなく、少し乱れていたところを元の位置へ戻していく。
以前、「清潔感は、『足す』より『減らす』でつくられる。」という話を書きましたが、それにも近い感覚です。
美容室で、あえて大きく変えないという選択もあります。
美容室へ来たからといって、毎回大きく変える必要はありません。
「最近ちょっと疲れていて、なんとなく今の髪型もしっくりこなくて」
そう話してもらえれば、それも十分なカウンセリングの材料になります。
今の髪型が本当に合わなくなっているのか。
単純に伸びてバランスが崩れているのか。
顔まわりだけ調整すればいいのか。
少し軽くするだけでいいのか。
僕ら美容師ができるのは、ただ「変える」ことだけではなく、その人の今の状態を見ながら、どこまで変える必要があるのかを一緒に考えることだと思っています。
判断は急がなくていい。でも、整えることはできる。
疲れている日に鏡を見て、「今の自分、なんか嫌だな」と感じることはあると思います。
そんな日に、大きな変化を急いで決めなくてもいい。
一度休んで、次の日にもう一度鏡を見てみる。
それでも違和感が残っているなら、そのときに考えればいいと思います。
でも、髪を整える。
眉を整える。
少し姿勢を戻す。
服を整える。
そうやって今の自分を少しずつ整えていくことはできます。
変えることと、整えることは違う。
何かを大きく変えなくても、少し整った自分を鏡で見たときに、「これでいいかも」と思えることもある。
美容師として、僕が大切にしたいのは、そういう変化です。
次回予告
次回は、
「髪型を変えなくても、分け目で印象は変わる。」
について書こうと思います。
いつも何気なくつくっている分け目。
少し位置を変えるだけでも、額の見え方やトップの高さ、顔まわりのバランスは変わります。
大きく髪型を変えなくても、少し「位置」を変えるだけで、今までと違って見えることがある。
次回は、そんな分け目と印象の関係について書いてみようと思います。
