「髪質改善って、結局何をするんですか?」と聞かれることがあります。
ここ数年、美容室のメニューで「髪質改善」という言葉をよく見るようになりました。
髪質改善トリートメント。
髪質改善カラー。
髪質改善ストレート。
いろいろな名前があるので、お客様からすると、正直何が違うのか分かりにくいと思います。
実際、僕もお客様から、
「髪質改善って、傷んだ髪が治るんですか?」
と聞かれることがあります。
でも、まず伝えておきたいのは、一度ダメージした髪が、施術によって新品の髪に戻るわけではないということです。
僕は「髪質改善」という言葉を、それだけで万能なものとして考えないようにしています。
そもそも、「髪質改善」という一つの施術があるわけではありません。
少しややこしいのですが、髪質改善という言葉は、美容室によって指している内容が違います。
トリートメントを中心にしている場合もあれば、熱を使うもの、薬剤を使うもの、ストレート系の施術を含めてそう呼んでいる場合もあります。
だから、
「髪質改善をすれば、この髪になります」
と施術名だけで考えるのは、少し難しいんですよね。
大切なのは、髪質改善をするかどうかより、
今、何が原因で髪を扱いにくく感じているのか。
まずそこを見ることだと思っています。
パサつきと、クセは同じではありません。
たとえば「髪が広がる」という悩みでも、原因は一つではありません。
乾燥やダメージによって毛先がまとまりにくくなっている。
クセによって髪が広がっている。
カラーやブリーチの履歴によって、部分ごとに状態が違う。
カットの重さや量感が、今の髪質に合っていない。
見た目では似たような「広がり」に見えても、原因が違えば必要な施術も変わります。
クセが原因なのに、トリートメントだけでまっすぐにしようとしても難しい。
逆に、ダメージや乾燥が中心なのに、必要以上に強い薬剤を使う必要もありません。
だから僕は、メニュー名を決める前に、まず髪の状態を見ることを大切にしています。
髪は、これまで何をしてきたかでも変わります。
今見えている髪だけではなく、その髪がどんな施術を受けてきたのか。
カラー。
ブリーチ。
縮毛矯正。
パーマ。
ホームカラー。
毎日のアイロン。
同じように見える髪でも、履歴によってできることは変わります。
以前、**「複雑履歴ブリーチは、『明るくする技術』ではない。」**という話を書きましたが、これは髪質改善でも同じです。
今だけきれいに見せることより、その先も扱える髪を残すこと。
場合によっては、「今日はここまでにしておきましょう」と判断することも、美容師の仕事だと思っています。
「ツヤが出た」だけで、髪質が変わったとは限りません。
美容室を出るとき、髪にツヤがあって、手触りが良くなっている。
もちろん、それは嬉しい変化です。
ただ、その瞬間の見た目だけでなく、僕が気になるのはその後、自宅でどう扱えるかなんですよね。
乾かしたときにまとまりやすいか。
朝のアイロンが少し楽になったか。
毛先が以前より扱いやすいか。
何週間か経ったときに、無理が出ていないか。
以前、**「髪型は、セットした瞬間より、何もしない日に差が出る。」**と書きました。
髪質改善も、それに近いと思っています。
美容室で完成した瞬間だけではなく、次の日からどう付き合えるか。
そこまで含めて考えたいんです。
髪質改善をしたい、ではなく「何を改善したいか」。
もし美容室で髪質改善を相談するときは、
「髪質改善をしたいです」
だけでなく、
「朝、ここが広がる」
「毛先が引っかかる」
「雨の日だけ膨らむ」
「アイロンを毎日使わないとまとまらない」
そんな普段の悩みも伝えてみてください。
その方が、美容師側も必要な施術を判断しやすくなります。
場合によっては、髪質改善メニューではなく、カットや別の施術の方が合っていることもあります。
施術名より、悩みを先に考える。
僕は、その順番の方が自然だと思っています。
「治す」ではなく、今の髪を扱いやすく整えていく。
髪質改善という言葉から、傷んだ髪そのものを元通りにするようなイメージを持つ人もいると思います。
でも、髪にはそれまでの履歴があります。
その履歴を無かったことにはできません。
だからこそ、今ある髪を見ながら、必要なところを補い、必要以上に負担をかけず、毎日扱いやすい状態へ少しずつ整えていく。
大きく変えるのではなく、今の状態を見て、必要なことを選ぶ。
それは、これまでgrit.JOURNALで何度も書いてきた「似合わせ」や「整える」という考え方にも近い気がします。
髪質改善は、傷んだ髪を魔法のように治すことではない。
今の髪と、これからどう付き合っていくのか。
僕は、そこから考えることを大切にしています。
次回予告
次回は、
「眉毛は、左右同じにすれば整うわけではない。」
について書こうと思います。
顔も、眉も、完全な左右対称ではありません。
毛の生え方。
骨格。
眉の高さ。
表情を動かしたときの見え方。
左右で少しずつ違います。
だから眉を整えるとき、大切なのは、左右をまったく同じ形にすることではなく、顔全体で見たときに自然に見えるバランス。
次回は、メンズアイブロウの施術でも僕が大切にしている「眉の左右差」について書いてみようと思います。
